2009年11月 8日 (日)

「写真と民俗学 内藤正敏のめくるめく東北」─吉祥寺美術館

006_3 吉祥寺美術館で「写真と民俗学 内藤正敏のめくるめく東北」という企画展を見た。

 1938年生まれの内藤氏は、写真家であると同時に東北の民間信仰などを研究する民俗学者でもあるとのことだ。チラシ情報によると、なんでも大学の専攻は化学だったとか。そのせいか、最初は宇宙や生命が写真のテーマだったのだが、25歳の時に出羽湯殿山の注連寺で鉄門海上人の即身仏に出会い、衝撃を受け、修験道への興味を深めたという。

 と、さもわかったように写し書きしているが、実はちんぷんかんぷんである。即身仏とは何か。修験道とは何か。

ネットで調べてみると、即身仏とは、ひとことで言えばミイラらしいが、言わばミイラ化した仏として祀られることを目的にした最も過酷な修行らしい。修行僧はまず食事を断ち、自らの肉体の脂肪や水分を削ぎ落とし、腐りにくい体を作っていく。その後、土に掘られた穴の中に入って絶命するまでお経を読み続けるのだという。

修験道(しゅげんどう)とは平安時代に広く信仰されるようになった日本独特の宗教らしい。日本古来の山岳信仰がベースで、仏教など他の宗教・信仰の影響を受け、それらの諸要素が習合して形成されたようだ。山に籠もって厳しい修行を積み、超自然的な霊力を得て、衆生の救済を目指すらしい。この山岳修行者が山伏なのだという。

以上はネットで検索して得た情報なので、もしかしたら間違いがあるかもしれない。申し訳ない。

修験道という宗教の存在も即身仏信仰も知らなかった。確かに、ミイラ化した仏の写真は衝撃的だった。

今回の展示会では、武蔵野市の友好都市である岩手県遠野市、山形県酒田市に取材した内藤氏の作品が中心に紹介されていた。

内藤ワールドはなかなか言葉で表現するのが難しい。「私にとって、写真がモノの本質を幻視できる呪具であるとすれば、民俗学は見えない世界を視るための“もう一つのカメラ”だ」というチラシに書かれた内藤氏の言葉はあまりにも深い。

 この企画展はきょう8日が最終日。入場料は例によって嬉しい100円だ。

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2009年9月 6日 (日)

日本画家・上村淳之氏の作品展─武蔵野市立吉祥寺美術館

0817 武蔵野市立吉祥寺美術館で「上村淳之(うえむら・あつし)展─唳禽(れいきん)を描く」が開催されている。

 1933年生まれの上村氏は、祖母、父と三代に渡る日本画家一家に生まれた現代日本の代表的な花鳥画家だ。現在は、奈良の「唳禽荘」にアトリエを構え、画題となる鳥たちを飼育しながら制作にいそしんでいるのだという。

 展示作品はどれも大きく、シンプルだった。一辺が1~2mの大きな紙の上に鳥が1~2羽となると、構図が大切になってくるなと思った。鳥の位置、向き、背景の色、濃淡、月や植物の位置など、おそらく計算し尽くされているのだと思う。余計なものがないので、見ていてとても落ち着く。「静寂」を絵にするとこんな風になるのかもしれないと思った。自然の音以外何も聞こえてこない。ちなみに唳(れい)とは、鶴、雁などの鳴き声の意味らしい。

 展示会は9月27日まで開催されている。例によって入場料はありがたい100円だ。

 なお常設の荻原英雄記念室では、荻原氏の「ギリシャ神話シリーズ」全42点がパネル展示も含めて紹介されている。こちらもかなり見ごたえがあった。

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2009年8月30日 (日)

牧島如鳩展─神と仏の場所

Photo JR三鷹駅下車すぐの三鷹市美術ギャラリーで「牧島如鳩(まきしま・にょきゅう)展─神と仏の場所」が開催されていた。

 同ギャラリーのHPやチラシによると、牧島如鳩(1892~1975)は、ハリストス正教の信者であった画家の父親の影響を受け、16歳で東京・御茶ノ水にあるニコライ堂の神学校に入学し、日本最初のイコン(聖像画)画家山下りん氏に師事したという。卒業後は同正教会の伝教者として日本各地の正教会に赴任してイコンを描いたらしい。

Photo_2 だがその一方で、仏教の勉強や仏僧との交流を通じて仏画も描いていたという。さらには、キリスト教と仏教を習合した独特の宗教画を描くようになった。宗教全般に興味があったようで、最終的には神も仏も一であるという立場に至ったようだ。

例えば、1929年の作品「医術」には、キリストの横に観音様が立っている。よく考えると奇妙なコラボレーションだ。1960年代の作品「千手千眼マリア」では、いわば千手千眼観音とマリア様が合体している。お釈迦様が立ち上がり、キリストの復活を思わせる作品もあった。如鳩の独特な宗教観、世界観が描かれていてどれもとても興味深い作品だった。本人は「500年後の人々に自作を見てもらいたい」と語っていたらしいが、どんな反応を期待しての発言だったのだろうか。

宗教画以外の普通の風景画や人物画も展示されており、如鳩は才能豊かな画家だったのだなあと感服させられた。

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2009年8月19日 (水)

白衣観音坐像ご開帳─吉祥寺・月窓寺

Photo_2Photo_3吉祥寺の月窓寺では毎年夏に白衣観音坐像がご開帳される。案内板によると、この観音様は元禄年間(1688~1704)に作られたもので、武蔵野市の有形文化財に指定されている。今年初めて拝むことができた。残念ながら遠目にしか見られなかったが、金色の像だった。

毎年このご開帳に合わせて境内では門前祭が開催される。さまざまな露店が軒を連ね、盆踊りのやぐらの横ではイベントが行われ、多くの人で賑わっていた。そんな中、観音堂はひっそりとしており、他に参拝する人は誰もいなかった。少々寂しい気もしたが、観音様は人々の楽しげな様子を見守っているのかもしれないとも思えた。

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2009年8月 2日 (日)

ゴーゴリ生誕200周年でロシア映画3本立て

2000907192009年度ロシア文化フェスティバルの枠組みの中で、「ゴーゴリ生誕200周年記念ロシア映画フェスティバル」が開催された。ゴーゴリの作品を題材にした映画、「妖婆・死棺の呪い(ヴィイー)」(1967年)、「検察官」(1977年)、「外套」(1959年)の3本が一挙上映された。

ロシアの作家(といってもゴーゴリはウクライナ人だという)というと、ドストエフスキーやトルストイなど、哲学的な重いテーマが潜む作品を書くというイメージがあるのだが、ゴーゴリは少し違う印象を受けた。今で言えば、ホラーの要素が入ったファンタジー作家とでも言うのだろうか。作品をまともに読んだこともなく、ましてやロシア文学の専門家でも何でもない素人が生意気なことを言って大変申し訳ないのだが、そんな素人でも、ゴーゴリは凡人にはない才能の持ち主であることが実感できた。想像力がすごいと思った。

「ヴィイー」は、主人公の神学生が魔女に呪い殺されてしまう話。「外套」は、外套を新調することだけを楽しみに役所でこつこつと働く貧しい役人が、外套を新調したその日の夜に追いはぎに遭い、ショックで病気になり死んでしまう話。両方とも主人公の人生に何の救いもないのが非常に悲しかった。「そういう運命なんだ」というのがおそらくキーワードなのだろう。「検察官」は、不正や汚職まみれのロシアの田舎町の役人や実力者たちが、ペテルブルクから視察にやって来た検察官を盛大にもてなして取り入ろうとするのだが、実は人違いだったという話。これは風刺コメディーとしては面白いかもしれないが、やはり田舎の純粋な人々の姿が痛々しかった。3本とも、鑑賞後に何とも言えないやるせなさが残った。

その一方で、映画の製作技術には脱帽した。特に「ヴィイー」は、ハリーポッター顔負けのファンタジー・ホラー映画になっている。登場する妖怪たちは皆非常に独創的なキャラクターで、全編通じてカメラワークが絶妙だった。40年以上も前の映画と聞くと驚いてしまう。

久々の3本立て上映、合計約5時間弱だったが、何とか耐えられた。余談になるが、友人が「栗原小巻さんが来ている」と教えてくれた。合作映画に出演するなど、ソ連・ロシアとは縁の深い方だ。後ろ姿しか見られなかったが、思っていたよりも小柄できゃしゃな印象を受けた。

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2009年7月29日 (水)

横浜散歩─神奈川県立歴史博物館

 横浜で友人とランチをした後、馬車道を少し歩いた。日本で初めてガス灯が灯ったり、アイスクリームの発祥地があったりするこの一帯は、1859年の横浜開港で西洋文化の影響をいち早く受けたようだ。

Photo_2370 ひときわ目をひく石造りの西洋建築の建物は、神奈川県立歴史博物館だった。1904(明治37年)に建設された旧横浜正金銀行本店の建物だという。中に入ると、薄暗く少しひんやりし、なんとなく歴史の匂いがした。

 ちなみに1階の展示は無料で見られる。また「ともしび」というティールームがあり、アップルケーキと飲物のセットがなんと370円で楽しめた。

 横浜は今、開港150周年で盛り上がっているが、みなとみらいや山下公園といった人気スポット以外にも、このように安価で楽しめる場所はあるようだ。

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2009年7月26日 (日)

鴎外忌

Photo 7月9日は森鴎外の命日だった。

鴎外の墓は、太宰治と同じ三鷹市の禅林寺にある。墓の場所も太宰の斜め向かい側だ。夕方の墓地には先客と思しき一団がいたが、どうやら目当ては太宰の墓だったようで、後で鴎外の墓にも気づいていた。

墓には美しい生花がたくさん飾られ、娘である森茉莉さんの文庫本やフロッピーなどが供えられてあった。

特に太宰や森鴎外のファンというわけでもないのだが、禅林寺のこの墓地はなぜか落ちつ着くので足を運ぶのが苦にならない。

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2009年6月24日 (水)

プレ桜桃忌─太宰治の墓へ

Photo 6月19日は桜桃忌。作家太宰治の命日(遺体が発見された日)であるとともに、誕生日でもある。毎年この日には彼の墓がある三鷹市の禅林寺を訪れているのだが、今年は生誕100年ということで特に太宰が注目されているため、墓参客もさぞかし多かろうと思い、前日の18日に足を運んだ。

 蒸し暑い曇り空の夕方。墓地には先客が1人いるだけで、他に人影はなかった。その先客も太宰の墓参りが目的だったようで、彼の墓石の前でしばらく手を合わせて去っていった。墓には色とりどりのたくさんの美しい生花と、カップ入りの日本酒が供えられていた。普段からこうなのかどうかはわからないが、彼の墓の周りだけひときわ華やかだった。斜め向かい側には森林太郎、つまり森鴎外の墓があり、こちらにも、太宰ほど多くはないが、美しい生花が供えられてあった。

時代を超えて多くの人々をひきつける作品を生み出した偉大な作家たち。この墓に足を運ぶ人は、おそらくこの先もずっと絶えないのだろう。

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2009年6月14日 (日)

吉祥寺美術館─所蔵品でめぐる異国の風景

090609 恒例となった武蔵野市立吉祥寺美術館訪問。今回の展示は「旅へ─所蔵品でめぐる異国の風景」というタイトルで、同市の所蔵品から諸外国の風景を描いた作品が紹介されていた。浜口陽三氏、山喜多二郎太氏、清水昭八氏、永沢まこと氏といった様々な時代のアーチストたちが、フランス、イタリア、中国、朝鮮、そしてニューヨークなどの様子を描いている。

 一番興味深かったのは野田九浦氏の「朝鮮風俗」という1935年頃の作品だ。民族衣装を着た女性2人が描かれた、縦1メートル近くありそうな大きな絵だが、そのもとになった小さなノートのスケッチも展示されていて、そうか、旅先ではこの小さなノートにスケッチをして、帰国してから大きな絵にしたのだなということがよくわかった。

 この展示は6月28日まで開催中だ。併せて近年購入・受贈した作品も紹介されている。入館料は100円。

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2009年5月10日 (日)

動物画の奇才・薮内正幸の世界展─吉祥寺美術館

 武蔵野市立吉祥寺美術館で「動物画の奇才・薮内正幸の世界展」が行われている。

0427 最初は動物画を聞いてもピンとこなかった。図鑑を手にとる機会もなく、動物の絵にはあまり縁がないと思っていたのだが、自分が気づいていないだけで、薮内さんの緻密な絵は非常に身近なところにあった。  

 薮内さんの活動はとても多彩だ。動物の骨格を正確に描いた「世界哺乳類図説」の解説用イラストから、動物をテーマにした絵本や企業のキャンペーンポスターのイラストまで、いわば「硬軟」さまざまな仕事を手がけていらっしゃる。記念切手の自然保護シリーズや動物園の案内板やパンフレットの挿絵などを見た時には、あれも薮内さんの作品だったのかと驚いてしまった。鳥の名前が付いていた旧国鉄の特急(「はやぶさ」とか「らいちょう」とか)のポスターを見た時には、なんとなく嬉しくなってしまった。

 すべての絵に共通していると思ったのは、動物に表情というか意思があるように感じられた点だ。どの動物も鳥も、今にも動き出してしゃべりそうに見える。そこに、薮内さんの技術と人柄が表れているように感じた。

 例によって入場料100円のありがたい美術館。この展示会は524日まで開催中だ。

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